エディトリアルデザイン応用講座
全14回(1回:2.5H)のカリキュラムです。このエディトリアルデザイン応用講座の目的は、造本またはページレイアウトにおけるデザインセンスを上げ、就転職活動に必須のポートフォリオに入れる作品を作っていくことです。
センスを上げる
デザインができるかどうかはセンスです。しかし、センスとは持って生まれたものでもありませんし、ちょっとキャッチーなビジュアルをそれっぽく作れることでもありません。
- 視覚伝達のしくみを学ぶ(構図や配色、質感などがどのように認知されるか)
- 対象となる人(社会)がどのように受けとるかを感じる
- 造形アイデアの発想力を鍛える
- 出来上がったモノが読書にどういった印象を与えるかを観察する
これらを身につけるには、本を読むことでもありませんし、理論を知ることだけでもありません。それでは、みんなが同じもを作ることになりますが、「人と同じ」はデザイナーとしては致命的です。他の人とは違った視点、アプローチ、造形表現があり、何通りものアウトプットを出し続けることができる人。これが「デザインセンスがある」ということです。
エディトリアルデザイン応用講座を受講されている方は、書籍や雑誌が好きだったり、少なくとも興味を持っていると思いますが、「好き」ということと「作れる」ということは違いますし、「作れる」ということから「良いものが作れる」というところまでは長い訓練も必要になります。
書籍や雑誌のレイアウトデザインで必要な事は、「情報の編集」「表現の発想」「デザインの定着」の3つだと思っています。広告よりも膨大な情報をきちんと読者に伝えるには「情報を編集」する必要があり、その情報を文字で伝えるのか、写真で伝えるのか、図版で伝えるのか、さらにどんなイメージで伝えるのかを編集する必要があります。同じ世界観を伝えるのでも、その方法は無数にあります。それらの表現の発想が沢山出すことで、比較し、クオリティを上げていくことができます。
制作課題
エディトリアル応用講座での課題は2つです。
一つは「冊子」の制作です。ZINEかムック本、雑誌の付録冊子のいずれかを選択し、制作してもらいます。ページ数は16ページ以上とし一冊まるまる作りましょう。
もう一つは「雑誌レイアウト」とし、既存の雑誌をベースにして特集ページをデザインします。特集ページが終わったら表紙や雑誌ロゴへと展開していきましょう。
企業、地域、施設などが発行するフリーペーパーや、個人のアーティストなどが有料で出版するZINEがあります。
第1課題の判型はA4以下で、中綴じ製本とします。まずは、どんな内容、テーマの冊子を作るかを決めましょう。
テーマが決まったら、判型や綴じ方向、ページ数を決め、ダミーを作ります。ダミーの冊子を元に台割表やサムネイルを書いて、全体的な流れや必要なコンテンツを設計しましょう。
授業カリキュラム
- 1回目
エディトリアルデザインと言っても、多くの事を含んでいます。造本設計であったり、紙面設計であったり、実際のページレイアウトであったり。雑誌であれば、雑誌毎にアイデンティティが確立され、それを具現化するためにすべてのデザインが存在します。
1回目では、エディトリアルデザインとは何かを講義し、またみんなで意見し合える時間として取りたいと思います。 - 2回目
【ZINEの制作】
ZINEとはMagazineから来ていますが、簡単に言うと通常の出版社が発行し流通する本ではなく、本を作りたい人が自由に作った本のことを言います。海外では市場も大きくなっており、近年では日本でもZINEを専門に扱うお店も出てきています。
MOUNT ZINE https://zine.mount.co.jp/エディトリアルデザイン応用講座の課題として「ZINE」を作る事を第1テーマとします。2回目では、市場調査としてZINEのことを調べて行きつつ、どんなテーマや世界観の「ZINE」にするかを考えてもらいます。いきなり作り始めたり、素材を集めるのではなく、「テーマ」や「ユーザー層」、似たようなものにどんなものがあるかなど、きちんと価値のあるZINEとなるのかを企画として立ててもらいます。ZINEの配布場所
Flying Books(渋谷) http://www.flying-books.com/
TOWER RECORDS(渋谷) http://tower.jp/store/Shibuya
ONLY FREE PAPER(渋谷ほか) http://onlyfreepaper.com/
SUNDAY ISSUE(渋谷) http://www.sunday-issue.com/
UP LINK(渋谷) http://www.uplink.co.jp/
UTRECHT(渋谷) http://utrecht.jp/
WIRED CAFE 渋谷WFRONT http://www.cafecompany.co.jp/brands/wired/shibuya_qfront/
SHIBUYA PUBLISHING BOOKSELLERS(渋谷) http://www.shibuyabooks.net/
VACANT(原宿) https://www.vacant.vc/
蔦谷書店(代官山) http://tsite.jp/daikanyama/store-service/tsutaya.html
MOUNT ZINE(都立大学) https://zine.mount.co.jp/
nostos books(世田谷) http://nostos.jp/
NADiff a/p/a/r/t(恵比寿)http://www.nadiff.com/home.html
模索舎(新宿) http://www.mosakusha.com/voice_of_the_staff/
往来堂書店(千駄木) http://www.ohraido.com/
commune(新代田) http://www.ohraido.com/
手紙舎(つつじヶ丘)http://tegamisha.com/shop
TACO ché(中野) http://tacoche.com/
百年(吉祥寺) http://www.100hyakunen.com/
ブックス エール(吉祥寺) http://www.books-ruhe.co.jp/
トムズボックス(吉祥寺) http://www.tomsbox.co.jp/
moi(吉祥寺) http://moicafe.blog61.fc2.com/
ONLY FREE PAPERヒガコプレイス店(小金井) http://onlyfreepaper.com/ - 3回目
ZINEの企画が決まったら、その企画をプレゼンテーションしてもらいます。他の人のプレゼンにも耳を傾け、意見することで物事を観察する力が付きますし、企画の善し悪しも分かってきます。
企画が決まったら、「造本」の仕様を決めていきます。「判型」「製本方式」「綴じ方向」「ページ数」「用紙」などを決め、その仕様でダミー(束見本)を作り、サイズ感を検証します。 - 4回目
次に、「台割表」と「サムネイル」を作ります。読んだ人にどのようなストーリーとして1冊の本を感じさせるのか、全体のテーマ、文章や図版の分量、章割りなどを考えます。 - 5回目
台割表とサムネイルが出来上がったら、InDesignでドキュメントを作成します。マージン/段組みでもできなくはありませんが、文字以外にも写真や図版などを揃えたりすることを考慮し、「レイアウトグリッド」を使います。
ストーリーに則った文章や写真、図版などの資料や素材として使えそうな情報を収集していきます。これらもいきなりレイアウトするのではなく、一旦情報として収集し、どう編集するのかを吟味していきます。 - 6回目
資料や素材を元に、ドキュメントにレイアウトしていきます。全体的な流れや、文章の階層構造を意識し、ページ構成していきます。文章を編集する必要もありますし、写真などは画像処理をする必要も出てきます。 - 7回目
引き続き、レイアウト作業を行いながら、講師に相談し全体像を見失わないように進めていきましょう。 - 8回目
大まかなレイアウトを完成し、プリントアウトして確認します。ページ毎のボリューム感や素材の善し悪しを判断し、必要があればサムネイルを変更したり、素材を差し替えたりします。 - 9回目
完成したドキュメントを実際の用紙にプリントアウトし、製本します。 - 10回目
ZINEの発表。
今後のメディア展開としては、ZINE発行のDMやポスターなどがあってもいいと思います。 - 11回目
2つ目の課題として、「雑誌レイアウト」に取り組みます。
雑誌のロゴデザイン、表紙デザイン、特集ページのレイアウトデザインが課題になります。
どの「雑誌」のどんな「特集号」をやるのかを決め、まずはその雑誌のアイデンティティの調査や同じターゲティングの雑誌などを調査し、その雑誌の具体的な特徴をまとめておきます。 - 12回目
雑誌レイアウト作業 - 13回目
雑誌レイアウト作業 - 14回目
最終プレゼンテーション
「雑誌レイアウト」はロゴ、表紙、特集ページとしていますが、ポートフォリオには新聞広告や中吊り広告なども追加してメディア展開することで、よりまとまりのある作品にすることができます。
ZINE
参考サイト
MOUNT ZINE https://zine.mount.co.jp/
PHOTO! FUN! ZINE! http://p-f-zine.jimdo.com/photo-fun-zine/
minne https://minne.com/category/saleonly/art/zine
PIC 05 http://onimaga.jp/pic-05-zine.html
雑誌レイアウト