隔年くらいで購入している書籍「DTP&印刷スーパーしくみ事典」(発行・発売 株式会社ボーンデジタル)の2015年版が発売されます。発売日よりも一足先に見本誌を読ませて頂きましたので、レビューさせて頂きます。
本書は13章で構成されているDTPや印刷に関しての知識・用語の事典で、章は印刷物制作とDTP/ハードウェア/電子出版とデバイス/カラーマネージメント/デジタル画像/文字とフォント/組版・レイアウト・デザイン/プリプレスワークフロー/カンプとプルーフ/デジタル印刷/印刷/製本/後加工/印刷とエコロジーに分かれています。
解説ページは項目毎に見開き説明されています。分かりやすいイラストやビジュアルがメインで、この手の込んだイラストが本書の一番の魅力になっていると思います。
DTPが普及しパソコンで印刷物のデータが制作できるようになりましたが、制作側が最低限の印刷知識を持った上でデータを作らなくてはいけない。この事がずっと言われてきているわけですが、相変わらず現場はローカル・ルールばかりで、駄目データを印刷側オペレーターが修正して印刷しています。その事が制作側にフィードバックされないために、ちゃんとしたデータを制作しているつもりでいるデザイナーがほとんどではないでしょうか。
PDF入稿が普及しきれないのも、Illustratorでレイアウトデータ作ってしまうのも、世界標準からかけ離れている日本のDTP業界の実情を制作側の人たちが認識していない事が一番の問題なのかと思います。現場毎のローカル・ルールそのものが駄目とは思いませんが、標準を知った上でローカル・ルールを運用していないと、ローカル・ルールがあたかも標準であるかのように勘違いしてしまいます。
- 印刷する用紙に合わせてプロファイル変換してますか?
- Illustratorでレイアウトして「文字組版」がとか、語ってませんか?
- 画面上でちゃんと見えていれば印刷できると思ってませんか?
- PDF/X-1aとPDF/X-4の違い分かりますか?
- デジタル印刷機が注目されているの知ってますか?
関心ない人ほど、知らなくても仕事できてるって言うのですが、そういう人はいつの間にか淘汰されていくんですよね。印刷という技術を使って印刷物という物を作ろうとしているのですから。材質のことも知らないプロダクトデザイナーが居たら怖いように、印刷の技術やDTPの仕組みを勉強しないグラフィックデザイナーは駄目ですよね。少なくとも、これから業界を牽引してく方々には新しい知識をどんどんと学んでいってほしいです。もちろん、デザインと技術の両輪がないといけませんが。
残念なのは本屋に行っても印刷に関する書籍の少ないこと、グラフィックデザイナーが印刷技術に関心のないこと、印刷の業界団体が制作側に向けての啓蒙活動をしないこと、などでしょうか。Adobeの責任も大きいと思います。
現状の愚痴みたいな話になってしまいましたが、本紙は毎年改訂して最新のDTPと印刷業界の情報を提供してくれている貴重な書籍だと思います。事典なので、読むだけで理解できる訳ではないですが、各項目で関心を持った事からより勉強していく取っかかりになると思います。すでに現場で仕事をしている方はもちろん、これから業界に就職していこうとしている方にも、一冊手元に置いておくことをお勧めします。
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おまけですが、ボーンデジタルが出版しているPhotoshop本の「フォトをアートにする魔法 – Photoshopマスク&コンポジット – 」は非常に勉強になりました。ただの知識や情報、テクニックの記載ではなく、考え方の思想があるというか、長い時間を掛けて学んでいくべきことが凝縮されています。
この出版社は、これ以外にも海外の執筆者の本を数多く出版してくれています。こういう本を読むと、日本の出版社はぱっと読んで理解できる「分かりやすい本」ばかりを出版し、何度も読み返さないと理解できない本を敬遠していることが分かり、悲しくなります。ぱっと読んで分かる書籍じゃないと売れないんだという話を聞かされたことがありますが、本当にそうでしょうか? 逆に自分達の首を絞めてる気がしてしまいます。
「Photoshop 合成の秘訣 -選択ツールを極め 驚異のエフェクトで実現する合成- Photoshop Compositing Secrets 日本語版」、「Photoshop レイヤーズ -Photoshopが誇るレイヤー機能パーフェクトガイド」、「Photoshopで描くデジタル絵画 -画力向上のアイデアとヒント」など、是非読んでみたい本が沢山あります。かなりお高い書籍なのでなかなか手が出ないのが残念ですが、これからも海外の執筆者の価値ある書籍を発売していって欲しいと思います。
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